コラム031:パッケージの指導
カリキュラム・マネジメントの概念が出てきたとき,正直,それが「新しいもの」とは思いませんでした。
当たり前のこと,「普通のこと」と思えたんです。特別支援学校の先生の中には,似たような感覚をお持ちの方はいるかもしれません。
それはなぜなのか。
答えはすぐに分かりました。
特別支援学校では,元々,やっていたからです。
元々,年間でやることが決まっている小学校や中学校とは違い,特別支援学校は子どもたちに合わせてカリキュラムを自分たちで作っていきます。
小・中学校のような一律の教科書がないことも多く,教科書が一人一人違う状況。中でも,児童生徒一人ひとりに対して一から教材を準備することの多い知的障害教育に焦点化し,教材を提供するシステム開発を始めたのがTeach Uです。授業自体,学習指導要領を手掛かりにすべて手作りなわけです。毎年毎年,一からカリキュラムを作ることを想像してみてください。毎年,教科書を作るようなものですから,その実現は難しい部分があります。
それぞれで教材なども用意するので,同じようなものを同じ学校の職員が同じ時期に作っていることもあります。お互いが何を作っているのか,知らないことも多いでしょう。そこの手助けになるように,教材の骨組みを作りたい,特別支援学校のデジタル教科書のような位置づけのものが作りたい,と思ったのが,このTeach Uを始めた理由の一つでもあります。
パッケージの指導
定着のしくみがあります。
それが,各教科を合わせる,各教科をつなぐ,という手法です。
以前,このような投稿をしました。
コラム007でも載せたエピソードですが,再度紹介します。
たとえば,勤務校の中学部では保健体育でマラソンの単元があり,2週ほど,マラソン大会に向けて練習します。
マラソンを走った後は,クールダウンをして,汗の始末をして着替えて休憩しますが,その後の時間で「理科」で体のしくみについて学びます。息が上がることと関連させて肺の機能のことを学んだり,汗や筋肉痛で体に実感がある状態で,体の部位について学んだり,学びの文脈を大事にしながら学習します。
「数学」もします。自分が走った周回数を記録し(自分たちのペースに合わせて,自分たちの目標に向けたマラソンをするので,みんな同じ制限時間内でどれだけ走れたかの周数を記録していきます),それを表や棒グラフに記入し,自分の目標に対する評価や次の目標設定をしながら,実感のもと,グラフについても学んでいきます。勤務校では,複数の指導形態を組み合わせて子どもたちの学びの文脈を組み合わせる工夫を,パッケージの指導と呼んでいます。学習をパッケージすることで,学習効果の向上をねらっています。「生きた学び」づくり,です。(パッケージの指導は,熊本大学教育学部附属特別支援学校の随分前の研究成果(コミュニケーションの学習の研究)で出していますが,ホームページでは公開しておりません)
逆に言うと,そういった工夫をしないと,うまく定着しませんし,授業として成立しづらくなります。単独の授業では,なかなか定着までいきません(きっかけにはなりますが…)。
専門性を活かしあって
学校のしくみの話。
学年によってきっちりやることが決められた小学校や中学校では,先生方は教科書や指導書,教科書会社が作ったテスト用紙などを使って毎年同じことをやっていくわけですから,教科に関してプロフェッショナルになっていきます。学校を異動しても,教科書が同じであれば,対応できるはずで,教科書が違っていても,ある程度できるのではないかと思います。なので,小学校や中学校の先生は教科の専門性が高い,というイメージを私はもっています。
特別支援学校の先生は,個々に合わせる専門性をもっています。特別支援学校で働くということは,その場での対応等,試行錯誤をするしくみが元々多いのかもしれません。
専門性が異なる二者が互いの専門性を活かしあったら,すごく強みになるのではと感じています。
(今回は「しくみ」の話なので,あくまで専門性はそれぞれであること前提の話です。)
社会に開かれた教育課程,と呼ばれて久しいですが,違う業種の学校間のつながりも,小さな「開かれた」かもしれませんが,大事だと感じるこの頃です。