「Teach U」の立ち上げに至るまで

授業中に活用するソフトウェアを教えてください

2018年度に,全国の小学校,中学校,高等学校,特別支援学校の教員200人に対して「授業におけるICT活用に関するアンケート」を取りました。その結果,82.5%の教員がプレゼンテーションソフトを授業で活用していました。授業中に最も活用されているソフトウェアはプレゼンテーションソフトであることが分かりました。

これは,「プレゼンテーションソフトが教育現場に普及している」ことを示しています。言い換えると,「プレゼンテーションソフトを扱うことのできる教員は多い」ということになります。

一方,同アンケートの質問項目の一つ,「デジタル教科書使用率」より,特別支援学校におけるデジタル教科書の使用率は3.9%でした。この結果の背景には,特別支援教育では,児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応えるため,予め用意されたデジタル教科書が児童生徒の実態に合わないという実態がうかがえます。教育的ニーズに合わせるため,各教員が目の前の児童生徒に合わせて教材を自作していることが明らかになりました。これらを受けて,各教員の教材開発を支えるシステムが十分でないと考えました。

デジタル教科書使用率
(後藤匡敬,「授業におけるICT活用に関するアンケート」結果より(2018年7月~10月,全国の教員200人))

そこで私は,特別支援教育,中でも,児童生徒一人ひとりに対して一から教材を準備することの多い知的障害教育に焦点化し,教材を提供するシステム開発を始めました。 2018年度及び2019年度には科研費(奨励研究) に採択され,資金面でのサポートを受けながら,開発を進めてまいりました。2018年9月には,熊本大学教育学部技術科・塚本研究室(以下,塚本研)と共同で「知的障害教育デジタル教材サイト」を開発及びWeb公開をし,情報フィルタリングのオーバーブロッキング(フィルタリングがかかりすぎてWebブラウジングが制限される現象)で教材作成に支障が出ている学校現場においても活用できるWebサイトの構築に成功しました。

そして2019年6月,このWebサイトを大幅リニューアルいたしました。その名も…

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「T」と「U」。

「教える(Teach yoU)」。

そして,これまでたくさんの先生方が作ってきたものの役目が終わったらそれぞれのパソコンなどに眠ってしまっている,質の高いプレゼン教材を掘りおこすイメージの「スコップ」の形

この二つをかけてロゴを作りました。

「Teach U」の目指すもの

「Teach U(ティーチ・ユー)」が,各教員の教材開発を支えるシステム になれば,という思いがあります。

Microsoft社の「PowerPoint」や,Apple社の「Keynote」等に代表されるプレゼンテーションソフトは,授業で広く活用されています。プレゼンテーションソフトは教員にとって「授業作り定番のソフト」であると言えます。

TeachUの目指すところ
Teach Uの目指すところ

「Teach U」で公開していくプレゼン教材のコンセプトは,「できるだけ,シンプルに。」 プレゼンテーションソフトをそれぞれの先生方が児童生徒に合わせて操作してカスタマイズできるように,あえて骨組み状態のプレゼン教材の公開を心がけています。

児童生徒は,自分の知っている身近な先生や友達の顔が大きな画面に出てくると盛り上がり,引きつけられます。特別支援教育の教材開発は,その子のことを知っている先生にしかできない部分があります。「Teach U」の教材を土台にして,日々の教材開発に生かしてもらえたらというねがいがあります。

「TU Parts」とは

「①タブレット型端末+②画面転送→③大型ディスプレイへ出力」。そしてそこに先生がいる,という環境。

Teach Uのプレゼン教材の利用イメージ

①~③の3つが揃ったところでの利用を念頭に,プレゼン教材を開発しています。まず出てきた課題が,PowerPointは画面のどこを触っても次のスライドにページが送られてしまうということ。そこで,「画面切り替えのタイミング」をオフにしてみました。すると,スライドの切り替えが不便になってしまいました。この問題を解決するために編み出した,ページ送り操作ボタンが「TU Parts」の始まりです。

様々な操作をボタン化することで,タブレット型端末での利便性も向上し,ヒントボタンなど,新たな概念も生まれました。

「TU Parts」をコピー&ペーストして,既存の教材をもっと面白くしてみてください。

「Teach U」の教育現場での活用

あくまで教材は「教える材料」。作りこみすぎた教材のみで授業を進めるのではなく,教材を提示した大きな画面の隣に教師がいて,教師が教材を使ってパフォーマンスをして成立する授業。そこが,「Teach U」が目指す授業の形です。

「TeachU」では,プレゼンテーションソフト(PowerPoint)で作成したプレゼン教材を公開しています。クリエイティブ・コモンズの条件を守っていただければ,教育現場にて無料で活用いただけます。プレゼン教材をそのまま活用したり,児童生徒に合わせてカスタマイズしたり,授業作りに活用いただけたら幸いです。

プレゼンテーションソフトの教材ですので,比較的容易に活用いただけると思います。また,コピーして貼り付けるだけで従来のプレゼン教材に機能を追加できる役立ち部品「TU Parts」や著作権フリーの「イラスト」も順次公開しますのでご自由にご活用ください。

感想や問い合わせ,要望等は,当サイトの専用フォームにて送信ください。絵コンテのデータをダウンロードできるようにしています。プレゼン教材のイメージを絵コンテに描いていただき,「お問い合わせ」ページよりファイルを添付して送付いただくと,その教材を作成できる…かもしれません。

こちらのコラムでもTeach Uの生い立ちに触れています

Teach Uについての論文が公開されています

さらに詳しく知りたい方は,こちらの論文をご参照ください。

オンラインイベントで

以前,sozo.perspectiveの海老沢さんのイベントでお話しした際にも,Teach Uについてお伝えしました。

※2022/7/25 追記 パンフレット作りました

最後まで読んでいただきありがとうございます

当サイトは,特別支援教育での活用を目的としたプレゼン教材をWeb配信します。また,本研究の代表者(後藤匡敬)の研究成果物の公開媒体として,今後も塚本研と共同でWeb運営を進めていきます。

2019年6月 後藤匡敬

※2023年9月30日 追記
「学校現場にいる知的障害のある児童生徒に,デジタル教材を使った学びを届けたい」,Teach Uの目的の1つです。

↓研究代表者↓

熊本大学教育学部附属特別支援学校

教諭 後藤 匡敬

↓関連サイト↓

日本の研究.com

科研費サイト(JP18H00154,JP19H00150,21H04005)

指導内容確認表