コラム022:Teach Uを題材に教職大学院オンライン講義


熊本大学大学院教育学研究科の教職実践開発専攻(教職大学院)で,2020年度後期開催の講義に非常勤講師として全15回のうち,4回受け持ちました。大学の講義主担当の先生(熊本大学の藤原志帆先生)が11回,その合間に4回受け持つ,という配分でした。

特別支援教育教科指導演習」という科目です。

熊本大学シラバス
https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakuseikatsu/kyoumu/syllabus

シラバスに書いてある「実務経験を活かした授業」の項目の「該当(授業の中で、特別支援学校教諭が、児童生徒の教育的ニーズに応じた各教科の授業づくりについて解説する。)」という枠です。

熊本大学大学院教育学研究科は,勤務先に隣接しているので,本来でしたら毎回歩いてお話をしに行くところでしたが,新型コロナウィルス感染拡大防止のため,4回ともZoomによる遠隔講義となりました。学生と直接会わずにどう講義を成立させるかを考えるのは,自分にとっての1つのミッションでした。

また,主担当の先生とは,Microsoft Teamsで専用チームを作成し,そこで資料等の情報交換や内容の打ち合わせ,ZoomのID等をテキストベースでやりとりしました。

Teamsで必要情報をやりとり

大学院の講義はもちろん初めてだったのですが,月に1回ペースで進めていく中で思ったのは,学生の関心やニーズを生かしながら,講義の設計をしていく感じが,文脈を考えながらで面白かった,ということです。ある程度,やることは決めて臨みますが,特に学生からのアウトプットを受け,それに対してフィードバックを返す感じが,個人的に面白いポイントでした。

最初は割と一方的に話をしましたが,毎回課題を出し,学生はグループに分かれて各課題を協働的に話し合い,時には主担当の先生の回で検討して,次の私の回で発表する,という形態でした。そういえば,大学院の授業ってこんな感じだったなと,教えながら思い出しました。

前2回は教育課程について勤務校の話をメインに,後2回は得意分野を生かし「ICT活用実践」について取り組みました。この「ICT活用実践」で,Teach Uのコンテンツを活用したプレゼン教材を作り,それを基に模擬授業をしてもらいました。

この回で提示した課題の目的は2つ。学生が「PowerPointを操作すること」と「画面を介した学びを提供する経験をすること」です。

第4回で模擬授業をしたのですが,元々この回だけ,ソーシャルディスタンスを保ちながら,対面形式で行おうかと思っておりました(その場でフィードバックを学生さんに即時に生で届けたかったので)。しかしながら,状況が難しくなり,Zoom形式になりましたが,遠隔からどうやって模擬授業を成立させるか,ちょっと考えて,以下のようにTeamsで主担当の先生に提案しました。

模擬教室などを使い,①授業を俯瞰的にとるカメラ(iPad),②生徒役の目線から教師を見ることができるカメラ(iPad),③それと大型テレビかプロジェクターに接続したPowerPoint操作用PC,以上3つをZoomでつなぎ,(主担当の)先生と後藤がZoomで視聴するような感じだと,楽しそうです。セッティングは,院生にがんばって勉強してもらうとして。教育現場では,機器設置は日常的に教師の仕事ですので。いかがでしょうか。 音声については,本校で最近購入したスピーカーマイクのいいやつがあります。

これを学生に伝えてもらい,当日に臨んでもらいました。スピーカーマイクとタブレット用三脚は,勤務校のものをお貸ししました。

模擬授業で見たかった視点は2つ。

1つは作成教材の動き。もう1つは,子どもからの見え方です。

学生さんが機器設置を頑張り,模擬授業の教室のスタンバイ完了。その様子を,別の場所から講師陣が見守る形です。模擬授業を行う教室の音声は,下の画像でいう「PC③」に接続したスピーカーマイクに集約しました。

模擬授業のしくみ

使用したスピーカーマイクはこちら。

ユニファイドコミュニケーションスピーカーフォン YVC-330
https://sound-solution.yamaha.com/products/uc/yvc-330/index

↑スピーカーとマイクが一体になったもので,これ一つで,教室中の音声を拾い,PCから出力される音声を教室中に届けることができる代物です。

今回学生が設置したZoom模擬授業教室について,構造図を下のようにまとめてみました。この配置で,別室から講師が模擬授業の様子を視聴でき,PowerPointのスライドもリアルタイムで共有できました

Zoom模擬授業 教室内設置のの構造図 2021/01/11 追記

模擬授業教室に受講した教職大学院生が,大学の研究室に藤原先生が,そして学校の一室に私がいるような状況です。

模擬授業は,Teach UのTU Partsを使って教職大学院の学生さんが作成した教材を使って,大型液晶テレビを使って行われました。2グループで,教師役と生徒役を入れ替えながら。その後,授業ごとにこちらからコメントを,画面共有をしながら伝える,という方法です。

画面の前で模擬授業。学生さんは操作の支援も協力して行っています。

その中の一つ,音楽の授業では,プレゼン教材を液晶テレビに映して,教師が声に出して発音しながら,ことばの「拍」について学んでいくものでした。

自分も子どもになったつもりで,画面越しに手拍子をしながら授業に参加し,その間思ったことをスライドに起こし,模擬授業後に間に合わせて1枚スライドを作ってZoomの画面共有で下のスライドを共有し,プレゼン教材に対して思ったこと等をお話しさせていただきました。

教職大学院なので,実際に現場の教員の生の声を届けることを意識しながら話すようにしていました。今回,現職教員の私に声をかけていただいたのは,「できるだけリアルな実践を伝えることを通して,現場でこそ見える部分を伝えていくこと」に意義があるように思いました。

最後に,学生さんから一人一人感想を言ってもらって,担当分の講義は終了。

今回,大学院での講義ということで,どのような形になるか,最初は不安でしたが,進めていくうちに,「もっとこういうふうに展開すれば,いろいろ気付いてくれるのでは」と,学生さんの学び方をかなり意識して講義の準備をするようになったのは,自分の中で起きた変化でした。実際,初等中等教育にいる立場なので,高等教育での学びの提供は,また普段のものとは別物として考えるところもあり(強くアウトプットを意識するところとか),その点に気付くことができたのは,自分にとって大きな収穫でした。

「Teach Uの輪」でも紹介していますが,時々,大学の先生から「使える!」と評価の声をいただくことがあり,それを今回,自分で体験できたような気がしています。

教職大学院での連続した講義,勤務校では初めての事例だったので,講義内容のスライド等をすべて立ち上げる必要があったのがなかなか大変でしたが,自分にとっては非常にいい経験となりました。

※追記 2021/03/30 院生が作った教材を2点公開しました。フィードバックをもらえるとありがたいです。

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