コラム015:臨時休校の記録(2020年度5月期)
6月から,勤務校は学校再開。感染拡大防止対策で,ソーシャルディスタンスを保つ学校生活。下校後は消毒作業の毎日です。
それでも,学校に子どもたちが「いる」のと「いない」のとでは全く違うんだと実感すること数多でした。
やっぱり,子どもあっての学校です。
国の臨時休校要請が出たのが,2020年2月27日。
それから約3か月ちょっと。学校現場にはこれまでにない様々な変革が起こっています。
勤務校も,その例に漏れません。
その経緯を記録として,Teach Uとはあまり関係ありませんが,今後のために残しておこうと思います。
前回コラムでは2020年度4月期について書きまして,今回で3回目です。
今回は,休校期間の5月いっぱいまで,書こうと思います。
①~③5月第1・2週 模索
反響が大きかったのは…
4月16日の緊急事態宣言が全国へ拡大し,臨時休校期間が5月末まで再延長。在宅勤務強化。ほぼ出勤できない状況…。
「オンラインが,ある」から「オンラインしか,ない」の状況へ。
4月末はZoomの脆弱性が話題になっていた頃でしたが,使えるものは使うの精神で,各職員がZoomのホストに挑戦し,各クラスでZoom朝の会をスタート。職員のトライ,リトライが始まっていました。
YouTubeの限定公開とZoom朝の会,Zoomミニ授業等の取組を重ねてきたこのタイミングで,ある学部では保護者アンケートを実施。方法は,Googleフォーム。校内の研修や会議はZoomで行っており,意見の集約はGoogleフォームを積極的に活用していました。なので,利用イメージをつかんだ先生の「保護者向けにGoogleフォームでアンケートをする」という発想につながったのではないかと思っています。
回答結果では,YouTubeよりもZoomの方が反響が大きかったとのこと。
いくらYouTubeの限定公開動画に自分の知っている先生の顔や体操,歌などが出てきたとしても,やっぱり生の先生とコミュニケーションをとる方が子どもたちは反応していて,そんな様子を隣で保護者が感じていることが明らかとなりました。
この時点では,オンデマンド(非同期:YouTube配信)よりオンライン(同期:Zoomミーティング)の方がニーズが高かったようです。
「同期」は,参加者で時間を共有するのに対し,「非同期」は時間を共有しない,という特徴の違いがあります。たとえ時間的な拘束があったとしても,同じ時間に顔を合わせて生活にリズムをつける「同期」の取組の方が重宝されていたことが分かります。
同期と非同期
また,この時期は校外とのやり取りで,SlackやTeamsといった,チャットのような文字主体のコミュニケーションをとる機会が,個人的に増えていました。特にTeamsは,校内の職員間でも活用しやすそうだったので,思い切って,自分の受け持つ分掌部会を,Teamsで実施。顔や音声を感じられない,テキストミーティング(文字情報だけの会議)を,決められた時間からスタート(同期)して行ってみました。
すると…撃沈。
ミーティングは,リアルにしろ,オンラインにしろ,顔の表情や,相手の声色など,参加者と同期しているという実感を得られることが,ひとつの大きな成立の要因であることが分かりました。Teamsは,LINEの「既読」のような機能がないので,相手がその場に本当に居合わせているかどうかを確認する術がありません。結局,補助的な伝達手段(この場合,分掌部メンバーでのLINE)でトラブルを回避し,結局Zoomでミーティングする羽目になりました…。
整理すると,以下のようなことが見えてきました。
この特徴をつかみ,同期型と非同期型のサービス(コミュニケーションツール)を使い分け,バランスよく活用することが大事だと感じました。
顔がお互い分からなくても,音声のやりとりさえできれば,空気間は割と伝わるし,Teamsの投稿を使ったテキストミーティングが機能するかもと, 個人的には思いました。もちろん,顔が見えた方が断然コミュニケーションしやすいですが。
④~⑩5月第3・4・5週 躍進
ZoomとYouTubeの取組
在宅ワークが始まる直前の4月中旬,ある学部ではiPadの純正動画作成アプリ「iMovie」の勉強会を自主的に行っており,約1か月,かなり積極的に動画を作成されました。YouTubeへ動画を投稿すること自体の抵抗感が和らぎ,先生方が積極的に動画作成を重ねていた時期でした。
また,Zoom朝の会も,多いクラスでは週5回で行うなど,こちらも積極的に取り組まれて,子どもたちとのつながりを大事にしていました。
各家庭へは,学校一斉メールでまとめて1,2週間分のZoom朝の会のIDやパスワードを送信し,基本的に同じ時間に実施することで,生活のリズムを整える支援を重ねました。
Zoom朝の会の終わりに「次のZoom朝の会で〇〇を聞くからね」と見通しを伝えてみたり,
毎回同じスライドを画面共有して,「黄色の四角には何だったかな」と尋ねてみたり。
Teach Uでも,教材を作って公開しました。
毎日担当職員を割り振って,Zoomミニ授業を充実させたり,Zoom学部集会を行った学部もありました。
Zoom学部集会は,毎週金曜日に行いました。
子どもたちの手元には,今ある環境で行った結果,PCよりスマホやタブレット端末が多数。
iPad版のZoomでは,一度に最大9画面までしか,画面を表示できません。スマホだと4画面。でも,やりたいのはもっと多くの人数が集まるZoom学部集会。その目的は「それぞれの存在を感じ,所属感を味わうこと」。
そこで,より多くの人数を映し出すことができるPC版のZoom画面(下図のB)を子どもたちの画面に映し出すアイデアをその場の職員で考えました。
具体的なアイデアを書くと…
PC画面を大きなスクリーンに投影(下図B)し,その様子をタブレット(下図A)のカメラで生中継するように映し出しました。参加者(子どもたちの端末+職員の端末)は一斉ミュートかつスピーカービューにしてもらい,AのタブレットのみマイクをON。すると,Aだけが音声を認識するので,スピーカービューで認識されたタブレットAの映す様子が参加者に映るというもの。
内容は,「みんなでラジオ体操」と,画面の中から「1年生を探せ!」。盛り上がりました。
「みんなでラジオ体操」は,大型スクリーンの前に職員が示範役で立ちました。音声はうまくいかなかったので,アンプで大きめの音量で流し,その音を端末で拾う形で。トラブル対応で即時に行う場合は,安定感のあるアナログっぽい,慣れたやり方が一番です。
ただ,「1年生を探せ!」では,たとえ参加した子どもが回答したいとしても,それを遠く離れた教師に伝えるのが非常に難しいことが判明。画面を介して相手に情報を伝える練習は,考えてみれば,これまで学びとして扱っていませんでした。これは,今後必要だなぁ。
なので,次週の「2年生を探せ!」では,前回の反省を生かし,「その人は,何色の服を着ていますか?」「メガネをかけていますか?」「上から何番目ですか?」等の質問をすることで,子どもが理解しているか確認していきました。距離の離れた相手と画面共有をしながら,こちらの意思を相手に伝えるって,なかなか難しいことなんだという発見がありました。
オンラインで画面共有をしながら相手に意思を伝える練習になるような教材も作ってみました。Teach Uで数種類公開しています。
Zoom疲れ,向き合い方
一方,職員はどうかというと,Zoomミーティングによる会議が主流になりつつあった時期で,続けて何度もZoomミーティングを行う日が出始めました。すると,Zoomに参加している画面を休みなく見続けることで起こる「Zoom疲れ」が,先生方に見られるようになりました(自分も含む)。Zoomミーティングを進行している場合,ホストは,途中トイレにも行きづらいです。この時点では,ほとんどの先生方が「スピーカービュー(1人が画面に映る(音声を出している人))」「ギャラリービュー(複数人が一度に画面に映る)」の概念をつかみ,「ミュート(音声オフ)」と「ビデオオフ(カメラの映像配信オフ)」を覚えていたので,それらをうまく使って,ミュート等を適宜使う「疲れないZoomへの参加の仕方」を,皆さん自然と身に付けておられました。また,ハウリング防止のため,イヤホンを装着される方が増えました(「スピーカーから出力された音声がマイクに入り,それがスピーカーから出て,またマイクに…」という無限ループ(ハウリング)は,イヤホンをつけることでスピーカーをオフにし,ループを断ち切って防止することができます)。距離感を適度に保ったZoomの使い方は,この方法を持続可能にするために重要な視点のようです。
Zoomのレコーディング(録画)機能を使い,オンライン研修を録画。Zoom終了後,自動的にオンライン研修の様子が動画化されるので(少々時間はかかります),あとはそれをYouTubeで限定公開して,職員のみに公開する仕組みで研修のオンデマンド(好きな時に視聴できる)化を図りました。
オンライン研修とオンデマンド研修
すると,このオンデマンド研修が実を結びます。
都合が合わなくて,オンライン研修に参加できなかった先生方が,YouTubeに限定公開したオンライン研修の動画を,好きなタイミングで視聴し,情報を共有できるようになりました。この仕組みは,すごくいいなぁと思いました。
たとえば,子育て世代の先生でも,オンデマンドだと都合に合わせて視聴しやすくなります。
そして,一度③で運用に失敗したMicrosoft Teams。これも,使い方次第では,オンデマンドで書き込みができます。
YouTube限定公開の動画視聴のインプットと,Teamsを使って書き込みのアウトプットを,ともにオンデマンドで実現する。働き方改革にもつながる,面白い仕組みだと感じました。
そこで, 職員向けの「同期型オンライン研修」と「非同期型オンデマンド研修」を併用する新しい自主研修「掘りプロ(教材掘りおこしプロジェクト)」 をスタートさせました。掘りプロ自体は今年で3年目なのですが,新しい形態で今年度はスタートです。
掘りプロでは,以前から一部で活用していたロイロノート・スクールに関するものをテーマにした研修を実施。その名も,「ロイロであそぼ」。このロイロノート・スクールは,双方向性のあるツールでして,元々注目しており,学校IDを申請して発行してもらっていました。
あそんでまなぶ
参考にしたのはこちら↓
#いえであそぼう ロイロノートあそびのじっけん
https://note.com/uske1928/n/n1beab66004ca
熊本市の小・中学校が,オンライン授業を実施していて,そこでよく使われていたのも「ロイロノート・スクール」。通称「ロイロ」と,大人も子どもも呼んでいました。熊本市に通うきょうだい児や,お子さんがいるご家庭(児童生徒も,職員も)では,割と馴染みのあるアプリに,この時点でなっていました。
が,ただでさえ,新しい概念をインプットし続け,全体的に(自分も含め)少々疲れ気味だったので,ここは参加したい人が参加する自由参加の研修にして,内容は大人も遊びながら楽しく学べるものがいいなぁと,この研修を思いつきました。
まずは,ロイロについての基本的なことを押さえてから。
ロイロノートでは,カードに文字や写真,音声等を載せて児童生徒が教師に提出したり,教師が添削して児童生徒に返却したりできます。
結構いろいろな表現に活用できます。
あとは,いくつか予め遊びのきっかけを作っておいて,触りながら,感じながら遊んでいく感じ。
好きなものを写真に撮って集める「好きなのあつめ」や,予め指定した色のものを探して写真に撮って集める「色あつめ」をしました。
他にも,カードにかえるのうたを歌って録音したものを集めた「うたごえあつめ」,実際に子どもたちとのやり取りに使えそうな「健康観察」も試してみました。
参加された先生方の反応は,口々に,「これは使える!」「おもしろい!」というものでした。実はこれまでもロイロノート・スクールの自主勉強会は行ってきていたのですが,ここまで反応の良かったことはありませんでした。何かものごとを躍進させるには,必要性って大事ですね。
こちらは,提出期間を1週間にした「動画つなぎ『ふしぎなボール』」。最初に「画面の外に投げるといろいろなものに変わっていく」設定の動画だけ作っておき,あとは先生方に,「画面の外から何かが投げ込まれて,画面の外にそれを投げ出す」だけの動画を作ってもらう。それを最後に提出箱に集めて,ロイロ上で動画化して,掘りプロ勉強会内で上映会をする,というもの。出来上がった動画は,画面の外にものを投げると他の物体に変わっているという,不思議な動画でした。不思議っておもしろいですね。こういうネタは,子どもたちも,おもしろがってやってくれそうです。今回は動画つなぎでしたが,ロイロでは,つなぐ楽しみを感じました。
これを実現するには,ロイロを活用できるスキルが子どもたちに身に付いていないと難しい。それを育むためには,やはり普段使いの仕組み作りが必要だと,さらに強く思うようになりました。特別支援学校の場合は,家庭での授業のサポーターはご家族が主なので,いろいろなものを巻き込みながらの普段使いの仕組み作りが重要になりそうです。
そして,臨時休校が明ける
熊本は5月14日に緊急事態宣言が解除され,いよいよ5月末に臨時休校が解除。
その間,会えない先生方と繋がりながら掘りプロの研修を作っていったため,そのためのLINEグループを作っていました。
急な在宅ワーク開始により,慣れない自分は,仕事とプライベートの場が一緒であるワークスタイルになかなか馴染めませんでした。なので,境界線はどうしても曖昧になりがちで。
なので,LINEグループを廃止。かわりに,Teamsに移行。仕事はTeams。こういう割り切りも,今後は必要になってくるなと感じました。
学校再開直前には,廊下に矢印を。ソーシャルディスタンスを仕組む。新しい生活様式,学校の形がスタート。
さらなる模索は続きます。
ただ,この3か月の「もがき」は,決して無駄ではなかったと感じることに,度々出くわしました。
⑪以降の続きは,学校再開6月版で。
以前のシリーズはこちら
[2020/07/04追記:シリーズで書きました]
その他3回,全4回シリーズでまとめています。
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